【連載企画】ブライダル産業新聞(第8回:東京B.M.C.)

今こそ!!Hotel Wedding

※ブライダル産業新聞9月11日号掲載

東京ドームホテル(東京都文京区)セールス部・婚礼課マネジャーの松野寛布氏は、2016年の入社であるが、それ以前は約8年間ドレスショップに勤め、男性プランナーとしては異色の経歴を持つ。
学生時代には走り幅跳びの選手として、インカレで日本一を目指していた実力者。就職の際、スポーツと共通する、感動を伝えられる仕事を望みブライダル業界の門を叩いた。
スポーツ、エンタメの聖地ともいえる同ホテルならではの結婚式を、いかに作り上げているのか。新規・打合せの一貫制など、新たな取組みにも注目だ。

東京ドームホテル(東京B.M.C.) 
セールス部 婚礼課 マネジャー
松野 寛布さん

ドレスショップでの経験が活かされる

新卒でドレスショップに入社し、30~40人の女性スタッフの中で、男性はたったの1 人という環境で働いていた松野氏。新郎のタキシード、お父さんのモーニングを始め、着物系の衣裳合わせなどを担当していた。当時の経験から男性ながら衣裳に関する豊富な知識を持っていることは、今のプランナー業務にも大いに役立っているという。

やはり男性で衣裳を経験しているというのは珍しいですから、今はそれも武器になっています。新規接客でも、衣裳を語れる男性スタッフということで自ずとポイントは高くなりますし、館内見学をしながら例えばチャペルに映えるドレスのデザインや色なども提案できますから。

ドレスショップでは提携する式場やホテルへの営業も任され、30歳を機にセールス先の一つであった東京ドームホテルに入社し、イチからプランナー業を学んでいった。ここで強みになったのは、スポーツマンとしての経験である。

よくある光景として、新規接客時に新郎が途中で飽きてしまい、会話もあまり弾まなかったりすることがあります。そうした時にも、当ホテルは野球を始めとして、スポーツが一つの看板になっているからこそ、『何かスポーツをやっていたんですか』という雑談の中からコミュニケーションを図っています。私自身が体育会系であることで、どんどん話も盛り上がっていきます。

新規・打合せを経験し、その後マネジャーに就任。新規に出る際のアドバイス、打合せでイレギュラーが発生すれば相談を受けるなど、チームスタッフを管理している。また成約率向上のために、仕組みやオペレーションの土台を作る役目も担い、これまでの経験をノウハウに落とし込んでいる。

チームスタッフは、私も含めて中途入社の人材が多く、様々なキャリアを積んできているためそれぞれ自分の色を出していますが、一方で振り返ってみると、チャペルの見せ方一つとっても統一していない面はありました。この場所で立ち止まってこのセリフを言う、ここでパイプオルガンの演奏を流して聞いてもらう。披露宴会場でもどのように光の演出を見せるかなど、これまでバラバラだったことを、東京ドームホテルの接客スタイルとして統一化しています。中途入社のスタッフはもともと打合せを担当してきた人も多いため、特に新規に対しての営業は深く突っ込んでいく部分を明確にしてチーム内で共有しています。

接客シナリオを含め、現在営業方法の整備を進めている段階であるが、すでに成約率は上昇している。

また新規~打合せを、それまでの分業制から一貫制へと徐々に移行してきました。クチコミでも人、ホスピタリティ面を評価されているからこそ、分業制でよくある『言った・言わない』といった課題を軽減していこうという狙いもありますし、マーケット全体として件数も減少している中で、それならば1 組1 組をもっときちんとケアをしていこうと。

一貫制となれば新郎新婦とプランナーの関係性はより濃くなり、結婚式後にも繋がっていく。
同ホテルの場合、野球好き、ジャイアンツ好き、ライブ好き、ドームシティの遊園地好きという新郎新婦ばかりで、結婚式後に何度も訪れる機会は多い。野球観戦ついでに、ふらっと遊びに来ましたという新郎新婦も多いからこそ、密接な関係はより大事になってくる。生涯顧客を生んでいくことは、ウェディングチームの大切な役目であると語る。
中途入社で入社してきた他のスタッフもまた、野球好き、ライブ好きなど、東京ドームに強い想いを持っている。松野氏はチームマネジメントにはコミュニケーションが大切と語り、スタッフ同士の雑談を重視しているが、野球好き、ライブ好きのスタッフ間による、「今年のジャイアンツの調子はどうか」、「今度誰々のコンサートが行われる」といった話題は、同じ趣味を持つ新規の新郎新婦の接客にも活かされていく。それは大きな財産であり、同ホテルならではの強みだ。

新規のトークだけではなく、商品開発にも活かされています。
ペンライトや特殊効果のスモーク、テープ噴射の演出で提案している【ライブウェディング】は、それこそライブ好きのスタッフからの発案で、商品化まで中心になって動いてもらいました。
同じ趣味を持つ新郎新婦の声を集めることもスムーズですし、それを積極的に活かしています。エンタメ要素に関しては、当ホテルのプランナーは他より強いかなと思います。

こうして東京ドームホテルならではの結婚式を、次々に生み出している。もともと東京ドームシティで実施していた謎解きとコラボした、【謎解きウェディング】もその一つ。7 月に体験フェアを開催したところ、当初の計画を超えるカップルが参加。試食、謎解き体験、模擬挙式を実施し、あえてプランナーがつかずに自由に楽しんでもらうスタイルとした。

参加者にインスタを始めSNSで発信してもらうことにより、それを見た誰かが興味を持ってくれるかもしれないという戦略で実施しました。スポーツ、ライブ、アミューズメントなど、チャネルが多いのは当ホテルならでは。それこそ多様性ではありませんが、様々な結婚式スタイルを打ち出すことで、そこにハマってくれる人がいるはずだと思っています。

ホテルとして滞在型を提案する上でも、東京ドームの様々な要素は武器になる。土曜日に結婚式を実施し、そのままホテルに宿泊、次の日にラクーアで疲れを癒し帰ってくださいということも。
送賓のプチギフトとして、親族にはラクーア、ファミリー層には東京ドームシティ アトラクションズのチケットを渡すなど。このエリアならではのアイデアは豊富にあり、それを提案できるのも、一貫制で密なコミュニケーションを培ってきたプランナー達だ。