【連載企画】ブライダル産業新聞(第1回:東京B.M.C.)

今こそ!!Hotel Wedding

※ブライダル産業新聞2月11日号掲載

結婚式ニーズが多様化している今こそ、ホテルW巻き返しの最大のチャンスである。
そこで今号から毎月、全国宴会支配人協議会(全国B.M.C.)との合同企画として、全国のホテルのキーマンのリレー取材をスタート。ホテルならではの強みを結婚式にいかに反映しているのか、巻き返しのためにどのような対応をすすめているのかなどを追っていく。第1回はホテル雅叙園東京(東京都目黒区)ブライダル営業部チーフウエディングプランナー・杉本里佳氏に聞いた。

ホテル雅叙園東京 (東京B.M.C.) 
ブライダル営業部 チーフウエディングプランナー
杉本 里佳さん

杉本氏は2017年新卒入社、1年目は宴会部に所属、2年目からブライダル営業部に異動した。現在は、集客チームを担当しつつ、チーフプランナーとして新規や打合せ業務にも対応している。2020年、2023年には、リクルートブライダル総研主催のグッドウエディングアワードのファイナリストにも選出された。

多様化するニーズへの対応力

新規も担当していて、いわば一番近くで感じるのは、ニーズの多様化です。多人数・少人数はもちろんのこと、写真だけを考えている、カジュアルなレストランウエディングが良いなど。式も披露宴も、今の段階では考えてはいないという新郎新婦も来ます。レストランには個室もあり、コロナの影響でまだ行っていなかった顔合わせをしたいというカップルも多いですから、食事会やレストランでの式+平服の会食など様々な提案をしています。

ホテル雅叙園東京は、昨年CANOVIANO CAFEをオープン。レストランがゲストハウスのような自由なスタイル、料理もオリジナル対応をしている一方、CAFEでは商品をパッケージ化し、コースも単一にすることで料金帯を落としたプランを実現している。23ある宴会場も含めて、多様なニーズを確実に取り組んでいく体制を整備している。

ホテルであることの強み

宿泊施設を持つ強みを、どのように活かしているのか。

少人数を中心にスイートルームウエディングの需要は高まっています。また多人数のカップルであっても、優先価格で宿泊ができます。全部屋80㎡以上で、スチームサウナとジェットバス付。広々とした快適な空間づくりにこだわった結果、ルーム数は60室と少ないため、全カップルに無料プレゼントはできないわけですが、それも逆に価値になっています。

結婚式を機に、その後に利用してもらえるのも、ホテルであることの強みだ。昨年からは、『卒花講座』もスタート。これはもともと結婚式準備の一環として行っていたリングピローづくりやパーソナルカラー診断などの花嫁講座を、家庭版としてリニューアルし料理教室などを行っている。

MIYABI PASSPORTという会員制度も設けています。会員数は約2万人いて、そのうち挙式者が1万1000人を占めています。結婚式申し込み時に、加入してもらっています。会員には結婚式の料理を1年後に食べに来てもらう案内などを送っているほか、宿泊やレストラン等の利用でポイントの貯まる仕組みになっていて、ステータスに応じて様々なサービス、特典を用意。結果として、結婚式を機に生涯顧客を増やすことになっています。

『和』に対する絶対的なこだわり

自社ならではの特徴を、いかに打ち出していくか。その点で、ホテル雅叙園東京は『和』に絶対的な自信を持っている。

結婚式を検討する人の中で、和の志向を持つ20%を確実に獲得していくのはもちろん、ナシ婚に対するアプローチも和の会場だからこそ可能であると考えています。日本らしい価値、和の魅力や素晴らしさを伝えていけば、従来のドレス重視のイメージを敬遠していた人たちに、改めて結婚式を考えてみようというキッカケにもなるでしょうから。ただ、参列経験がないという人も多いため、魅力もなかなか伝わりにくい面はあります。そこでホテルとしてリブランド以降は、ゼクシィでもそれまでのチャペルを前面に打ち出したプロモーションを止めて、大きな和室玄関での和装写真をメインに置き、プラスで神殿や和スタイルのバンケット写真を配置するなど、『和』のこだわりを訴求してきました。

実際に神前式・教会式の割合は6:4であり、さらに約70%の新郎新婦が、結婚式当日に1着目か2着目で和装を選択。前撮りも含めれば、ほぼ全てが和装をなんらかのタイミングで着用している。自社運営の衣裳室は和の設えで魅力を打ち出し、色打掛だけでも180着のラインナップ。自社スタッフが、会場に合った提案を出来るのも強みの一つだ。

館内には、2500点以上の美術品や伝統工芸品を配置していて、和のイメージを高めるハードもホテル雅叙園東京の大きな特徴です。その全てに意味があって置かれているのもポイントの一つ。例えば4階の回廊の天井に飾られた美術品は、会場に向かう方の道に描かれているのは、振袖姿の未婚の女性。会場から出る方には菊の留袖姿の結婚をした女性になっています。そうした細かいことを含めて大事にしている部分を、新規接客などでもしっかりと伝えています。ハードや美術品などを見て単に綺麗だと思わせるのではなく、そこにある価値を合わせてキチンと感じてもらわなければなりません。

ホテルにおける結婚式の位置づけ

目黒雅叙園から、ホテル雅叙園東京にリブランドしたのは2017年のことだ。専門式場のイメージが強いままであれば、どうしても結婚式当日だけの関わりという印象を与えてしまう。その点、ホテルにリブランドしたことによって、結婚式後の様々な利用機会をそれまで以上にもたらしている。

打合せをした新郎新婦が、『子供が生まれたので3人で宿泊に来ました』、『レストランに行ってきました』と何度も訪問してくれています。結婚式当日だけではなく、その後も長く付き合っていけるのが、ホテルの魅力だと思っています。

同時に、ホテル利用から結婚式にも繋がっている。ホテル雅叙園東京の一般の宴席は、忘年会・新年会を始め、受賞パーティーといったお祝い事も多い。お祝い事で利用したパーティー参加者が、結婚式検討段階でも良いイメージを持って見学に来てくれるのはメリットである。さらに顔合わせなどの相談も多いため、そこから結婚式を訴求できるといういい循環も生まれている。その点では、結婚式を検討していなかった人、つまりナシ婚層に結婚式を訴求できるチャンスに溢れていて、それこそがホテルウエディングの価値であると言える。