【連載企画】ブライダル産業新聞(第13回:四国B.M.C.)

今こそ!!Hotel Wedding

※ブライダル産業新聞2月11日号掲載

地元高知市出身の五百蔵氏は、1999年同ホテルの前身である高知新阪急ホテルに入社。料飲部、宿泊部を担当した後、2005年から法人営業に配属された。20代の若さで地元の企業回りを重ねてきた経験は、ホテルが外部からどのように評価されているかの客観的な視点を育み、顧客ニーズとホテルが提供したいもののギャップの解消を重要視するようになった。それは婚礼部門に移ってからも変わらないスタンスだ。
「ホテルウエディングを手掛けていることは、法人営業においても強い武器になった」と語るからこそ、今一度ホテルで結婚式を実施する価値をどのように高めていくかを追求している。

ザ クラウンパレス新阪急高知
婚礼宴会営業課 支配人
(四国B.M.C.)
五百蔵(いおろい) 恭介さん

「どうして今、結婚式をしようと思ったのか?」の質問

新卒入社から6 年後に、法人営業部に配属。それまで宿泊、レストランと【待ち】の部門に所属し、来てくれた顧客に高い満足度を提供するスタンスであったため、外に飛び出て法人宴会を獲得してくる【攻め】の仕事には当初戸惑いもあった。

ただ営業を重ねるうちに、外からの目線をホテルに落とし込むという考え方に面白さを感じ、その後にも活かされています。気が付けば私の経歴は、半分以上営業部に特化しています(笑)

市内の法人を回り、企業のトップたちと色々な話をしていくうちに、地域におけるホテルの立ち位置を強く認識するようになっていった。ホテルに対する良いところは良い、悪いところは悪いという評価に、若い時から接してきた経験は貴重であった。さらに営業を通して知り合った青年団体などの活動や、様々な外部イベントにも参加。様々な業種、立場の人たちとのネットワークが拡大し、そこでの情報共有の機会も得られた。

今の立場になり、顧客ニーズとホテルが提供しようとするもののギャップをどのように解消していくかの礎になっていると感じます。

営業を通じて知り得た外部評価から、結婚式はホテルの強い武器になっているということも強く感じるようになった。当時高知市には、エリア特性でもある参加人数の多い宴会・パーティーを収容できるホテル、旅館が数多く存在していた。差別化を図っていく上で、立地面、バンケット数、宿泊機能はもちろんのこと、結婚式を実施しているという信頼感は営業トークの強みになった。その後、2010年に宴会と兼務する形で婚礼に配属され、2016年に婚礼マネージャーに就任した。

五百蔵氏は営業で培ったコミュニケーション能力を活かすかのように、新規来館のカップルに出来る限り挨拶をし、「どうして今、結婚式をしようと思ったのか?」と全員に質問している。コロナ禍以降少人数の問合せが増えている中で、こうした質問を重ねることは大切だ。10名、20名の人数帯であれば、ホテルでなくても結婚式はできるが、それでもなぜホテルウエディングを検討するのか。ここをしっかりと捉えていないと、アンケートだけでは見えない2 人の潜在的欲求を満たすことはできない。

いわばカップルが何を望み、当ホテルでどのように叶えられるのか。それをプランナーに伝達しておかなければ、せっかくホテルを選択してくれたにもかかわらず、価値をなかなか見いだせないものになる可能性も出て来ます。様々なニーズに対して、ホテルがどれだけ受け皿を持ち合わせて対応していくのか、取り組んでいくかが重要ではないかと考えています。

少人数の場合、自分本位よりも「家族を大切に思っているため実施しようと考えた」といった答えは多い。そこでホテルウエディングを選ぶのは、接客、料理、立地、宿泊機能など1 人1 人に向き合ったサービスを託されているからこそ。ホテル側としては、各部門のスタッフたちの技術・スキルを最大限発揮できる場が婚礼ととらえ、そのお互いの気持ちを結びつけることこそウエディング事業に関わる責務だという想いである。 

高知県の婚礼マーケットは、厳しい状況にある。人口は約65万人であるが、この10年間で7 万人減少。人口の約半分は高知市内に居住していて、婚礼施設に関してもほぼ市内に集中している。
婚姻届出組数は2013年の3200組に対し、2023年は2600組と、10年間で20%ほど減少。実施率も10年前の56%から、32%にまで落ち込んでいる。少子高齢化は年々加速しており、65歳以上の高齢者の割合が35.2%で、全国2 位となっている。

元来高知は、冠婚葬祭神事など何かと理由をつけて宴会をするのが好きな県民性です。結婚式の列席者が200人300人だった時代もあり、そのため列席する人数が少なければ恥ずかしいと見栄を張る傾向もありました。コロナ前でも100名以上を超えていましたが、現在は少人数帯の比率も高まり、平均は80名前後になっています。その人数ならば結婚式をしなくてもいいと判断して、実施率の低下に繋がっている面は否めません。

実施率をいかに高めていくかは、エリア全体の大きな課題でもある。その打開のために期待されるのが、2019年に発足した一般社団法人高知ウエディング協議会の存在だ。なし婚層の掘り起こしや文化の継承、さらに行政に要望のできる団体を作ろうと事業者が連携。2021年には同協会の提言が実を結び、高知市で結婚式を実施するカップルに対しての補助金制度が設けられた。昨年は人手不足解消のために、専門学校生や高校の先生向けに合同の就職セミナーを開催した。同ホテルも協議会に名を連ね、五百蔵氏もその活動に尽力している。

協議会での啓蒙と同時に、地域の迎賓館として位置づけられるフルサービスホテルとしての使命もあります。結婚式でホテルの強みを発揮していくことは大切で、例えば少人数用のスカイバンケットは、高知中心部にある立地を活かしたもの。また、ホテルクオリティ向上のため、スタッフの技術力も高めています。

中国料理の料理長・岩村聖彦氏は、全国中華料理コンテストの麵飯部門で最優秀となる厚生労働大臣賞を受賞。また洋食部門に関しても、松吉優料理長が歴史・格のあるトック・ドール料理コンテスト(全日本司厨士協会主催)において3 位に入賞した。

様々な資格を取得させていくことも大切。レストランサービス技能士や営業系であればホテル・マネジメント技能検定など。会社全体としても資格取得を後押ししていて、ホテルの高い商品知識やサービス、技術をホテルウエディングの強みとして、もっと外向けにアピールすることは必要だと考えています。ホテルマンは、セルフプロデュースが非常に苦手。だからこそどんどんPRすることで、クオリティを証明しています。