【連載企画】ブライダル産業新聞(第5回:名古屋B.M.C.)

今こそ!!Hotel Wedding

※ブライダル産業新聞6月11日号掲載

2009年、株式会社ナゴヤキャッスルに入社した北洞貴史氏。究極のサービス業であるという想いから第一志望はウエディングプランナーであったが、入社後はレストラン、バンケットなどの現場経験を5年間積んだ。27歳でバンケットキャプテンに就任し、その3年後には法人営業部門を担当。名古屋観光ホテル(名古屋市中区)へ異動してきて昨年の11月、ようやく念願叶ってブライダルの責任者に就任した。ブライダル経験が全くない状態で任されることになったからこそ、婚礼部門の位置づけの重要性を感じ取っている。

名古屋観光ホテル (名古屋B.M.C.) 
営業部 ブライダルセールス課長
北洞 貴史さん

結婚式の宣伝はホテルを知ってもらう機会

北洞氏は現場経験の後、6 年間法人営業畑を歩んできた。外側から見てきたからこそ、ホテルにとってのブライダルの位置づけ、社会的意義は高いものと感じていた。

社内におけるブライダルの意義に関しては、単なるイチ部門ではなく、様々な媒体に発信しホテルを多くの人の目に触れてもらう機会を作っています。いわば会社を代表する部門であり、ホテ
ルのブランディングを作っている。
例えばゼクシィへの出稿についても、それはブライダルの宣伝でありつつ、ホテルを代表したPRの意義もある。それをきっかけにホテルを知ってもらい、生涯顧客になってもらうという大切な役割を担っています。

ホテルWの強みは、通常婚礼、フォトだけ、フォト+会食、挙式のみなど、多様化したニーズに対応できるだけのプランと会場を持っていることにある。その分、幅広い提案が可能だといえる。
またレストランを使えることで、結婚式本番のみならず、例えば結納をしたい、顔合わせに使いたいといった要望にも対応できる。
結婚式後に、記念日の宿泊や子どもの祝いなど、宿泊も含めた総合施設としての強みも発揮できる。
もっとも、そうした繋がりを実現するためには、部門を超えた組織内の横の連携が大切だ。

社内において、私自身が大きな声でブライダルの意義を発信して他部署の協力を得ています。それをプランナーに還元していくのが、今の責務だと考えています。
実際にブライダルの外にいた立場から考えれば、『婚礼部門は何をやっているかわからない』と感じさせてしまうのも仕方ない。現金商売の他部署とは仕事のプロセスも異なり、それこそ今接客している顧客は何ヵ月後、何年後の売上に繋がっていくということも理解されにくいわけです。どういう思考で、どういうゴールに至っているのかをまずは他部署にも理解してもらうことが必要です。

北洞氏自体、ブライダルの責任者になって初めて、こんなに大変な仕事をしているのだと痛感したという。新郎新婦の想いを汲
みながら結婚式を作り上げていくために、様々な部署との折衝を20代前半の若いスタッフが担当しているからだ。

サービス現場のスタッフとして働いていた時は、プランナーから何か要望されても、何故これが必要なのか、やったこともないことをオーダーされて面倒だという想いもありました。
今の立場になってみると、プランナーたちは新郎新婦の希望を叶えるため他部署のスタッフと折衝していくうちに、間に挟まれて悩んでしまうことも出てきます。そもそもブライダルのプランナーたちは、採用段階から婚礼部署一筋というケースも多く、他部署との関わりが少なく関係性は希薄になりがち。
法人営業、サービスの現場スタッフとして様々な部署の人と関わりを持ってきた私が、ブライダルの仕事を発信して理解してもらい、プランナーたちが動きやすい環境を作ることをまずは第一に考えています。プランナーと他部署のスタッフとの、架け橋になるのが私の役割です。

例えばオリジナルウエディングケーキのリクエストが入っても、プランナーは誰に話せばいいのか分からない、シェフパティシエと話したことすらない。そこで「一緒に行こう」と調理場へ出向き、こういうリクエストをできませんかと北洞氏が繋げている。プランナーも力を発揮しやすくなり、結果として新郎新婦・ゲストの満足度を高めていくことができる。
北洞氏が名古屋観光ホテルに異動したのは、昨年の1 月、当初は宴会の責任者だった。それまで勤めていたナゴヤキャッスルとの違いとして、格や伝統を強く感じたという。館内には頻繁に中部財界のVIPが顔を見せる。そのブランドを、いかにウエディングと関連付けていくのか。

歴史・格を表現する【伏見百年婚】

歴史・格を結婚式で表現しているのが、【伏見百年婚】だ。
このコンセプトは、新郎新婦の結婚式を、この先100年語り継いでいくこと、祖父母・子ども・孫の3 世代で利用してもらうサイクルを100年に重ねている。

コンセプト自体は着任以前からあったものの、それがどんなものなのか一言で表せる共通のキーワードが必要ということで新たに『お帰りなさいとただいまが言える場所』というサブタイトル
をつけました。
コンセプトを構成する3 つのキーワードが、【家族】、【歴史】、【帰ってこられる場所】。
他人同士が結婚をして【家族】になった後にも、何か特別な日にホテルで過ごせる。
当ホテルは今年の12月16日で88周年になり、これまで皇族を始め、数々のVIPをおもてなししてきた【歴史】を感じてもらう。そして【帰ってこられる場所】は、24時間365日、名古屋観光ホテルはいつでも開いていて、いつでも利用者をお迎えします。
この3 つのキーワードが織りなす、『お帰りなさいとただいまが言える場所』という【伏見百年婚】のコンセプトを、全スタッフ、そしてパートナー企業にも落とし込んでいます。

パートナーにも落とし込むことで、例えばドレスを購入した場合は、孫の代まで着られる品質であること。
写真であれば、結婚式だけでなく還暦になった時にも撮影できるなど、同じ理念のもと、その先も100年にわたって2 人をお迎えするというアプローチを全体で表現している。

ブライダル部門には、家族の歴史をたどる【センチュリーブック】を用意しています。結婚式をする時に2 人の名前と日付を書いてもらい、その後ホテルに来ればいつでも見られるようにして
いて、また1 周年の記念日にレストランを利用した時などに、いつでも書き足せるようになっています。
【伏見百年婚】と共にスタートした一冊で、ブックに書き足すためにホテルへ帰ってくる一つのきっかけになっています。