今こそ!!Hotel Wedding
※ブライダル産業新聞3月11日号掲載
全国のホテルウエディングのキーマンをリレー取材する本企画第2弾は、今年60周年を迎える伝統ある札幌パークホテル(札幌市中央区)の宴会予約課ブライダルアドバイザーの白井佳奈恵さんだ。
以前からブライダル業界に憧れ、それまで勤めていた歯科医院から転職してきて3年目を迎える。トランスジェンダーのパートナーと挙げた自身の結婚式で、担当してくれたプランナーに対しての感謝を抱いたことから転身を決意。結婚式が多様化しても新郎新婦には同じような想いを感じて欲しいと、常に寄り添うことを大切にしている。
白井さんはウエディングプランナーを目指して同ホテルに転職、1 年目から婚礼チームに配属され、現在は施行を中心に新規にも対応している。
転職前から激務を覚悟していたというが、それでも安定した職を捨てプランナーの道を志したのには大きなきっかけがあったという。
自身の結婚式が転職のきっかけに
それ以前は、専門学校を卒業し歯科医院で歯科衛生士として働いていました。その頃から、結婚式のキラキラした世界には憧れを持っていました。
実際にブライダルの世界に飛びこむキッカケとなったのは、自身の体験だった。白井さんは2019年、トランスジェンダーのパートナーと結婚式を挙げた。当時はLGBTQの結婚式に関して今ほどブライダル業界の理解も深まっていない状況で、施行事例もそれほどなかった。
私も、内心では無理だろうなと思っていました。ただパートナーが対応してくれるレストランを見つけてくれて、憧れだった結婚式を挙げることができました。私たちでも実現できたという喜び、偏見なく対応してくれたプランナーへの感謝、そして何より人生がより充実するものになったという実感を持ったことで、プランナーになりたいという決意も高まりました。
そんな白井さんが大切にしていることは、結婚式当日にもなるべく立ち会うことだ。新郎新婦の出迎えから始まり、事前の会場確認。結婚式最中でも打合せをしてきた内容が間違いなく時間通りに進んでいるか、変更があった場合にはいち早くキャプテンに伝えるという立ち位置で、当日施行を見守っている。事前に現場への申し送りをして、当日はキャプテンにお任せという一般的なホテルのスタイルとは大きく異なる。
新規接客、打合せもあるため、披露宴の時に常にいることは難しいのですが、それでも開宴、中座、お色直しのタイミングはなるべく顔を出すようにしています。どんなに忙しくても、お開きのタイミングは必ず立ち会っています。
お開き直後の新郎新婦は感動に包まれ、気持ちも昂っている。長く伴走してきたプランナーがその場に立ち会うことによって、新郎新婦から素直な感謝の言葉をかけられる瞬間を味わえるのだ。そこでかけられる感謝の言葉こそが、白井氏のモチベーションの源泉となっている。
多様化に応えるホテルの取り組み
ホテルウエディングというと昔ながらの型にはまったものと思われがちですが、当ホテルではLGBTQの結婚式も受け入れています。多様化に関してもプランにないからできませんではなく、それぞれの新郎新婦の希望を受け止め、実現するためにプランを柔軟に変更しながら対応しています。
広大なガーデンを持っている同ホテルでは、愛犬も一緒にという希望も多かった。2023年には愛犬と一緒に泊まれるルームを 3部屋新設したことで、前日の宿泊から結婚式まで共に過ごしたいという新郎新婦からの要望にも応じている。
会員アプリでホテルへの再訪を促す
白井さんは、ホテルウエディングの価値は、何度も利用してもらう生涯顧客化にあると語る。
ホテルは結婚式だけではなく、宿泊やレストラン利用など様々な記念日に使える場所。また写真スタジオ、美容室もあるため、将来子どもが出来れば100日記念、七五三、成人式に訪れてもらうことも考えられます。家族で新たな思い出を増やしていけるのがホテルウエディングだと思っていますし、それを伝えていくのが私たちの役割です。
札幌パークホテルでは結婚式後の利用を促進するため、【グランビレッジ】という会員プログラムと公式アプリを運用している。新郎新婦に対しては、お祝いポイントを付与している。ポイントを使ってその後の食事など、結婚式後も長く使ってもらえる仕組みとなっている。
自然豊かなロケーションを武器に
競合ひしめく札幌エリアにおいて、札幌パークホテルならではの強みとはそのロケーションにある。札幌の中心部にありながら、中島公園に面していて、広大なガーデン、独立型チャペルを持つのが最大の特徴。都会にありながらも自然豊かなロケーションを活かして、バンケットは大きな窓を配した開放的な雰囲気としており、ホテルウエディングのイメージとは一線を画す。
ガーデンではデザートビュッフェ、バルーンリリースなどにも対応しています。中島公園をロケ地とした前撮りも可能で、特に桜や紅葉の季節は人気になっています。東京在住のカップルから、雪景色の中で撮影、結婚式を実施したいという希望も寄せられることもあります。
ロケーションを活かした開放感、演出、ガーデンなど、ゲストハウスに近いイメージではあるものの、それにプラスしてホテルクオリティによって差別化を図っている。60周年と伝統もあり、VIPや海外ゲストへの対応など経験も豊富。それを結婚式においても知ってもらう意味で、新規の試食フェアは披露宴会場で実施し、キャプテン自らサービスを手掛ける。キャプテンがメニューを説明しコミュニケーションを図っていくことで、ホテルクオリティを体感してもらう機会としている。
料理のクオリティ、そしてサービスが、伝統あるホテルの最大の武器だと考えています。特に新郎新婦やゲストに、心地よく過ごしてもらうためのサービスは、他には負けないものを提供できていると自負しています。