【連載企画】ブライダル産業新聞(第9回:沖縄B.M.C.)

ホテル宴会サービスのProfessional Mind

※ブライダル産業新聞12月11日号掲載

1992年、専門学校卒業後に那覇市内のホテルに就職した比嘉 悟氏。その後ホテルでのキャリアを重ねる以外に、現地のブライダル施設での仕事、さらに専門学校で専任講師を務めるなど、異色の経歴を持つ。
バンケットサービスの現場オペレーションのスキルを各企業で発揮するだけでなく、ブライダル会場ではプランナーの役割を学び、専門学校では人材育成の仕組みづくりを進めるなど、現在にも通じる貴重な経験を磨いてきた。
2019年、現所属ホテルに転職後は、豊富な経験を活かしたマネジメントを貫いている。

ホテル コレクティブ
料飲部 宴会次長
(沖縄B.M.C.)
比嘉 悟さん

宴会サービス志すキッカケは結婚式の笑顔

ホテルの仕事を志すきっかけは、専門学校時代のインターンシップ。もっとも、最初はホテルに就職する気持ちもなく、いわば学校から言われて参加したという投げやりな気持ちで働いていた。

作業をしている時に、上長の先輩から呼ばれました。仕事の態度を厳しく怒られるのかと思いましたが(笑)、連れていかれたのは披露宴の行われている会場。ちょうどケーキ入刀のシーンで、新郎新婦の笑顔、祝福するゲストの様子を初めて間近で見ました。これだけたくさんの笑顔に囲まれる仕事だということに感動し、ホテルの仕事に憧れを抱いたまさにスタートでした。

そのホテルでアルバイトからそのまま正社員となり、バンケットサービスの仕事を開始した。24歳の時、先輩からの助言で大手ホテルに移籍。それまで務めていた施設に比べ、バンケット数、収容人数も倍の規模だった。もっともこれまで小規模ホテルで勤めてきたからこそ、臨機応変な対応などを手取り足取り仕込まれてきたという自信もあった。

大手ホテルでは8 年ほど勤務し、特にバンケットサービスのスタートのキッカケとなった婚礼の現場オペレーションを学びました。当時、那覇市内には仮設で宴会場にチャペルを作るのが一般的だったのに対し、専用のチャペルを初めて設置したホテルであり、婚礼件数も年間300件以上。披露宴の稼働も多い中で、現場経験を相当数積めたのは非常に大きかったです。ただ同時に、プランナー側の気持ちを全く理解できていない部分もありました。なぜこんなに要領が悪いのか、現場の気持ちを分かってくれないのかという葛藤もありました。

那覇市内の婚礼は特殊であり、入場してすぐに挨拶、乾杯、琉球舞踊、退場、そこから余興が延々と続くといったように、プログラムだけでも15個以上詰まっている。2 時間半きっちりスケジュールの入っている中で、その流れを事前に詰め切れていないことは多々あった。結果大幅に時間も超過するなどして、プランナーに対するストレスも生じていた。
そこで、まずはプランナーの仕事を勉強しようと思うようになり、ホテルの仕事を一旦離れてブライダルハウスTUTUに移籍。32歳という年齢での新たなチャレンジは、苦労も多かった。例えばパソコンもまだ一般的に普及していない時代、ホテルの宴会サービスの時には全く触ることもなかったのに対し、プランナーの仕事は基本パソコン業務。自分よりも若い先輩スタッフに、イチから教えてもらいながら覚えていった。

もっとも、挙式などのオペレーションは経験もあり得意な分野でした。周りから教えて欲しいと依頼され、直接新郎新婦とのやり取りを任されることも。営業ノルマも設定されていましたが、当日の流れを新郎新婦に提案できたことで、入社して数ヵ月ですぐにノルマも達成しました。

さらにワタベウェディングの施設へ転職し、実際に結婚式場のオペレーションを任されることになった。施設には他の大手ホテルの出身者もいて、それぞれやり方の異なるオペレーションをまとめるのも大切な役割だった。最初は反発もあったが、スムーズな流れを作る上でチームワークを重視。互いのやり方の良い部分をすり合わせながら、調整していった。
ブライダル企業を経験後、現ホテルに移籍する以前に5 年間専門学校で講師として務めた。ホテルを中心に人材不足は大きな課題で、若手をどう育成するのかはもちろんのこと、せっかく就職した専門学校生も1、2 年で退職してしまう状況だった。

専門学校ではテキスト中心の授業ばかりで、現場の空気を知れる機会は圧倒的に少なかった。そこで当時の上長に相談し、インターンシップを2 週間ではなく1 ヵ月、2 ヵ月と長期にすれば、就職率だけでなくその後の定着にもつながるのではないかという話をしました。
最初の1 年目はカリキュラム通りに進めながら、2 年目に沖縄B.M.C.の会長や役員にもお願いし、2 ヵ月ほどの長期インターンシップを受け入れてもらうようにしました。結果としてその年のクラスの学生30名は、例年であれば業界への就職が6 ~7 割なのに対し、全員ホテルに就職しました。

その後ホテルコレクティブの開業準備室から入社し、現在は宴会サービスを始め、企画、ディナーショーなどのイベント関係、さらに宴会予約を担当する営業チームもマネジメントする立場である。専門学校時代の経験は、人材不足の現場人員の採用強化、さらに定着率向上に生かされている。

人事総務中心ではあるものの、定着率を高めるためのアイデアや知恵を求められ、私も会議に参加しています。例えば口コミの良いコメントを受け取ったスタッフの名前を掲示して、表彰する取り組みもその一つ。特に裏方のスタッフの場合、顧客から評価されるコメントをもらう機会も少ないため、表彰されることでモチベーションも高まっています。

また、宴会空間の雰囲気作りも重視している。これはブライダル企業で経験してきた、結婚式空間づくりのノウハウが発揮されてのものだ。特に季節感を大切にしていて、クリスマスの近い時期にはビュッフェ台やバンケット内にライトアップやイルミネーションを施す。生花は費用もかかるため、季節の花の造花を使って装飾するケースも。LEDライトを季節に合わせて赤や緑、ピンクに点灯、2 、3 ヵ月に一度は変更している。宴会であっても、来場したゲストから写真を撮られるかどうかを重視している。

こういったアイデアやクリエイティブは私が担当しています。
宴会だからといって注文されていないから何もしないという姿勢では、会場の雰囲気は良くなりません。調理のスタッフの盛り付けへのこだわりもクローズアップされますし、やはり扉が開いたときに驚いてもらいたいですね。