ホテル宴会サービスのProfessional Mind
※ブライダル産業新聞9月11日号掲載
高校時代にホテルでアルバイトを経験したことからサービス業に興味を抱き、ザ クラウンパレス新阪急高知(高知県高知市)での仕事をスタートした中平梨沙氏。最初に配属されたのはフレンチレストランだった。2年後に宴会部門に異動となったが、そのイメージは【大変そうな仕事】であり、当初はレストランとのギャップに戸惑うことも多かった。その後、結婚・出産・産休育休を経て、再び宴会の現場に復帰。現在は副支配人としてはもちろんのこと、ママさんスタッフのロールモデルの役割も担っている。

料飲サービス課 一般宴会サービス 副支配人
(四国B.M.C.)
中平 梨沙さん
副支配人就任の面談時に当初は辞退を伝える
契約社員として同ホテルに入社して、はじめはフレンチ・鉄板焼きレストランに配属された中平氏。地元の常連を中心に会話を重ねながら、自らの名前を憶えてもらい、さらに顧客の好みに応じて提案する仕事に楽しさを感じていた。入社から 2 年後に宴会サービスへの異動が決まったわけだが、体力も必要で、かつ時間も不規則な仕事にきついと感じることも多かったという。

20年前の当時は、女性が宴会サービスに携わることは少なく、また現場の雰囲気が落ち着いていたレストランとは大きなギャップでした。とにかくついていくだけで精一杯であり、同期のスタッフが一緒に頑張っていたので何とか続けられていたという面もありました(笑)。ただ宴会の利用者から声をかけてもらえることも徐々に増えていき、人との関わりがレストラン以上に広がっていくうちに楽しさも実感できるようになりました。直属の女性上司からは、細やかな心配りで 1 人ひとりに寄り添ったサービスを大切にすること、備品管理など準備の重要性も学び、それをしっかりと守りながら仕事をしていくうちに、周りの人たちからも評価されるようになっていきました。
23歳で黒服デビューし、【会社の看板】としての自覚も芽生えていった。その後28歳で結婚、30歳で出産し、2 年間の産休・育休を取得した。産休・育休明けで復帰する際、宴会サービスのアシスタントマネージャーを任されることになった。

宴会サービス現場への復帰には、葛藤もありました。子育ての事情で残業もできず、決まった時間に帰らせてもらうことになります。産休・育休後はホテルの仕事に戻ろうと思ってはいましたが、正直に言うと宴会サービスを続けていく自信はまったくなくて、できればそれ以外の部署でと考えていました。
アシスタントマネージャーという立場も、プレッシャーになった。上司であるがゆえに、スタッフは表立っては何も言わないものの、果たして自分の働き方に納得してもらえているのかと考えることも多かった。時間の制限も必要な状況で、そもそも役職に見合う存在なのかと悩み続けた。さらに今年の 7 月には副支配人に就任することになったが、その面談の際にも、『自信がないので辞退したい』と直属の支配人に正直に伝えた。

その時に支配人から言われたのは、『限られた時間の中でも、私の目の届かないところに気配りしてくれて助かっている』という言葉でした。その時に初めて、これまでのやり方でよかったのだと感じ、より一層頑張らなければという想いも強くなりました。子どもの急な発熱や家族行事などで繁忙日でも休まざるを得ない状況では、なかなか復帰を躊躇してしまう女性が多いのは当然。ただ、休む前に必要なことを確認しておきながら、時間的制約の出てくる部分は悩まずに周囲に頼ればいいわけです。後輩たちに向けて私の働き方を見せることで、いざ彼女たちが結婚出産した後にも『続けられるんだ』ということを伝えていく。そのための環境づくりは何よりも大切だと思っています。そもそも子育てで時間的制約の出てくる以外でも、人によっては親の介護など家庭の事情により、働き方に様々な制約が大きくなるスタッフもいます。多様な事情を抱えている人であっても、悩まずに長く働けるホテルを作りたいという思いで今は取り組んでいます。
複数の宴会の状況を見極め全体コントロール
宴会サービスの現場で大切なのは、当日の接客以上に準備面であり、限られた時間の中で効率よく対応していく工夫が求められる。副支配人の立場になれば、部署全体にも目を向けなければならず、さらに他部署との連携も必要。スタッフが育休や産休を取ったとしても、安心して休める環境を作り全員でカバーできる態勢を整えていくという点で、若手時代に教わった細やかな準備の大切さを実践していると言っていい。
現在、ホテルの女性スタッフは増加傾向にあり、職場の雰囲気も大きく変わった。女性にとって働きやすい環境になってきた一方で、その分教育も重要になっている。またスタッフ数の限られた中で、チーム全体や複数宴会を視野に入れなければならない。

例えば、同じ時間帯に複数の宴会の重なっている場合、どの宴会場が最も忙しいかを把握し、それぞれの部署からスタッフを派遣する調整をします。休憩の取れないスタッフが出ないように、各会場の担当に声をかけながら配置を調整。祝賀会であれば乾杯、披露宴であればスパークリングワインを一斉に提供するタイミングなど、人手の必要になる場面と、それ以外の少人数で対応できる場面をジャッジしながら、メリハリのある人員配置のコントロールはより大切になっていきます。そうした全体最適を意識した管理は、副支配人として重要な役割です。
そこは、12年以上宴会サービスを経験し、様々な部署との連携を取れる中平氏だからこそ対応できるとも言える。調理、音響、照明、外部の協力会社とのやり取りや調整も欠かせないからこそ、経験は何よりの強みになっている。

最初のスタートがレストランだった経験も、今では活きています。テーブルマナー講習の講師を務めることもありますし、フランス料理やワインの知識を得ていることは強みです。
宴会場にはゲストがいて、主催するホストがいて、その双方に満足してもらうことを目標として掲げている。会の後にありがとうと声をかけてもらい、次回もお願いしたいと言ってもらえることこそこの仕事のやりがいだと語る。

チームワークによって、全員で作り上げる喜びも宴会サービスの仕事の大きな魅力だと感じています。新人のうちは覚えることも多く大変ではありますが、経験を重ねながらその中に楽しさを見出せるようになってもらいたいですね。
