【連載企画】ブライダル産業新聞(第10回:九州B.M.C.)

今こそ!!Hotel Wedding

※ブライダル産業新聞11月11日号掲載

ホテルニューオータニ博多(福岡市中央区)のブライダル部門で、新規チームのリーダーを務めている宴会予約課係長・前田麻里氏。
2009年、新卒でホテルニューオータニ東京に入社し、レストラン、宿泊部門を経験した後、ブライダルコーディネーターに。
2014年、結婚を機にグループホテルの博多に転籍し、昨年からチームを牽引している。前田氏は5年間の産休・育休を経て2022年に復職しており、女性の多いブライダル部門で新たな働き方を示すロールモデルだ。
競争の激化する福岡のマーケットにおいて、ユーザーに対しホテルクオリティ、ブランド力を新規接客の現場から伝えていく立場でもある。

ホテルニューオータニ博多(九州B.M.C.) 
営業部 宴会予約課 係長
チーフブライダルコーディネーター
前田 麻里さん

結婚を機に東京から博多へ転籍

ホテルニューオータニ東京は歴史・ブランドもあることで、結婚式のセールスではそのアドバンテージを感じていた。もっとも、配属された2012年当時はマニュアルのようなものはなく、先輩たちの作り上げたやり方をそのまま真似して、自分のものにしていくスタイルだった。新規、打合せ共に、とにかく先輩と一緒に同席しながら、一つひとつを学んでいった。

結婚式に関する知識は何もないまま飛び込んだわけですから、初めは分からないことだらけでした。それを新郎新婦に見せては不安にさせてしまうからこそ、とにかく気をつけたのは堂々としていることと嘘をつかないこと。その場で適当な返答をしないなど、当時の考え方は今も大事にしています。

2014年に福岡に転籍することになるが、グループの総本山で身に付けたニューオータニマインドは、前田氏の土台になっている。

ニューオータニらしい結婚式には二つの柱があって、一つは料理へのこだわり。
新郎新婦世代、親世代、上司世代まで全員に満足してもらえるクオリティであると共に、やはりスイーツは大きな強みです。スーパーシリーズは、ウエディングでも提供していましたから。二つ目は、おもてなし。新郎新婦には準備段階から結婚式当日まで安心感を与え、当日はスタッフ全員のゲストに対するおもてなしの気持ちが、同じ方向を向いています。

コロナを経て、少人数Wのニーズは福岡でも高まっている。多様な設備を有しているメリットを活かすために、同ホテルでもこのニーズを取り込んでいるが、ここにきて増えているのは九州在住者以外の遠方の新郎新婦だ。その割合は30%に達している。

地元が福岡で、今は関西、関東に住んでいるという人たちも当ホテルで結婚式を実施しています。先日も25名の親族だけの結婚式を行った後に、住まいのある横浜で職場の人や友人を招いて、もう一度ウエディングをするという新郎新婦がいました。

このニーズを獲得する上で、ニューオータニのグループ展開は追い風になっている。結婚式後にもホテルを利用してもらうため特典などを提供している会員制度は、グループの他のホテルでも適用される。仮に転勤になっても、自宅の近くにあるグループホテルを、人生の節目で使ってもらえるということはセールストークの武器の一つでもある。

コロナ禍から、オンラインフェアに注力してきた経験も力になっています。遠方の新郎新婦に対し、HP上では見せることのできない他の結婚式の写真や映像を使って接客しています。

チームリーダーとして、ウエディングをブラッシュアップしていく重要な役割も担っている。今後Z世代中心になってくる状況に対し、課題としてスタッフの働き方を挙げる。

Z世代は自分の時間を大切にするという特徴を踏まえ、拘束時間も不規則なプランナーという職業にいかに憧れを持ってもらえるか。そう考えたとき、私のような子育てをしながら、時には土日に休まなければならない立場であっても、プライベートを受け入れてもらえる職場環境であることは大切です。施行だと難しい面はあっても、新規チームであれば家事も子育ても仕事も両立できるというモデルになれればいいと思っています。

もう一つは、新郎新婦に対するアプローチ方法だ。デジタルネイティブであるZ世代の彼らに対して、どのような取り組みを進めていくか。その一環として、今年の 7 月、より情報収集のしやすいようにホームページをリニューアルした。HPトップには動画を流して、当日の結婚式の様子をよりイメージしやすく。さらにホテルの売りである料理のページは、シェフ、食材、調理をしている光景などを写真で掲載し、こだわりを表現している。

昨年の 9 月に東京から、即位の礼の料理責任者も務めた大竹孝行が、新総料理長に着任しました。それに合わせてメニューも一新。また、新規来館時の試食の際には、大竹自ら一組一組に挨拶に回ってもらっています。2 人の地元の食材を取り入れた、オリジナルメニューの打合せも直接対応。それまではどちらかと言えばメニューありきだったのに対し、総料理長の輝かしい実績を前面に打ち出しながら、納得感を得ています。

ニューオータニの料理と言えば、伝統のローストビーフ、スイーツのスーパーシリーズ、そして手作りにこだわったパンだ。
ホテル内のレストランではパンビュッフェも開催しており、連日満席の人気となっている。福岡一の規模を持つパン工房で、披露宴時間を逆算して手ごねしているわけだが、その光景の写真もHPにも掲載し、手作りを前面に打ち出している。
9月には、80~200名収容のバンケット【芙蓉の間】をリニューアルオープンした。会場全体をモノトーンで仕上げ、バックジョーゼットのコーディネートは 5 種類から選べるように。最新のLED間接照明、音響機材も設置した。

ホテルの伝統を守りつつも、最近の新郎新婦は目で見えるもの、写真に残るようなものを大切にします。花、内装、テーブルコーディネートなど、トレンドを取り入れることのできるバンケットであり、視覚、聴覚に訴えかける空間です。

同ホテルは今後、デジタル化をさらに加速していく方針だ。まずはパンフレット類を全てデジタル化して、QRコードを読み込めば端末で 1 ページ 1 ページめくって見られるシステムを導入。発送作業や郵送で数日かける必要もなく、データを送ればすぐに確認できるようにしておくことで、新郎新婦から親への情報共有もこれまで以上にスムーズになる。
結婚式にはあらゆる世代の列席者がいるからこそ、全ての人に満足を与える料理、サービスのクオリティを追求するのは大切であると共に、新郎新婦が今後Z世代中心になっていくのを見越した新たな対応も注目だ。