【連載企画】ブライダル産業新聞(第9回:広島B.M.C.)

今こそ!!Hotel Wedding

※ブライダル産業新聞10月11日号掲載

リーガロイヤルホテル広島(広島県広島市)営業部部長代理の岸房雄太氏は、1997年新卒入社し、同ホテル一筋で27年目を迎える。入社試験の時から婚礼部門志望で、途中、宴会予約などを経験したものの婚礼にはかれこれ18年も携わってきた。開業30周年となる同ホテルにおいて、まさにホテルウエディングの栄枯盛衰を肌身で感じてきたわけだ。
同ホテルは昨年から、テイクアンドギヴ・ニーズ(以下T&G)に婚礼部門を運営委託している。現在はゲストハウススタイルとホテルウエディングの融合の潤滑油であると同時に、長年培ってきた伝統とこだわりをしっかりと維持していく役割を任されている。

リーガロイヤルホテル広島(広島B.M.C.) 
営業部 部長代理
岸房 雄太さん

広島の迎賓館としての役割を共有

岸房氏の大学在学中に、リーガロイヤルホテル広島がオープン。
結婚願望も強く、「コミュニケーション能力を活かせるのは結婚式の仕事だ」と考え、婚礼部門志望で同ホテルに入社した。その後は婚礼の新規担当、打合せアテンダーなど、計18年間ブライダルの仕事に励んできた。
同ホテルは昨年からT&Gに婚礼業務を委託したことで、ブライダル課のスタッフは全てT&G側の社員であるが、そうした長年のキャアを見込まれ営業部の部長代理兼ブライダル課長として、T&Gとホテルのパイプ役を務めながら、売上を管理する立場である。

T&Gとホテルのサービスや調理など各現場との間に入って、様々な調整を進めてきました。
大変だった時期はあったものの、1 年経過して、T&Gと現場で直接やり取りするようになり、私自身がそこまで口を出すことはなくなりました。当ホテルの料理、サービスなどを、最大限リスペクトしてもらっているのは大きいかと。運営委託がスタートすると、通常の場合グランドメニューも一新するというような話になるかと思っていましたが、実際に食べてもらい、ゲストの反応などを踏まえて、料理はこのままで非常にいいと変わることもありませんでしたので。

同ホテルは地域の政財界に多くの固定客を持ち、2023年にはG7 広島サミットに参加した首脳の宿泊で利用されるなど、広島の迎賓館としての役割を果たしてきた。クオリティの高い料理、サービス面は、多くのVIP達から支持されてきたわけだ。
そうした部分を評価する新郎新婦と、T&Gが得意とするゲストハウスを志向する若い層の新郎新婦、その両者に対応していく上で、ホテルウエディング一筋だった岸房氏の力が発揮されている。

一つひとつの評判が一般の法人宴会などに繋がってくるのも、当ホテルならではの特徴と言えます。実際に、主賓のゲストが広島政財界のトップクラスという場合もあり、そうなると何度も利用してもらっている可能性が高く、ホテル側としても挨拶を兼ねて役職のあるスタッフによるお出迎えは大切。
さらに、動線も考えなければならないからこそ、結婚式に出席する全てのゲストを入念に確認しています。普段から利用してもらっている政界・財界人のご子息・ご令嬢の披露宴の予約が入れば、情報共有をして、他の宴会に出席する機会に挨拶をすることも必要です。

地域で歴史も格もあるホテルの場合、キッチリした披露宴を望む新郎新婦も一定数存在する。ゲストハウスのパーティースタイルでは見られない【立礼】も、披露宴志向の新郎新婦や家族からは当然のように依頼され、今はほとんど見られなくなった媒酌人を立てる結婚式もある。主賓であるVIPゲストの動線も含めて細かく決めていくことは多く、岸房氏がT&Gをサポートしてきた部分だ。

例えばワンフロアにいくつかの会場を持つホテルでは、一般の宴会ゲストと交わらないように、動線や控え室も配慮しなければなりません。披露宴で挨拶をする人、お酌回りに関しても、片手間ではなくキチンと専属スタッフを付けてケアする。顔合わせや結納を重視するといった、しきたりを重んじる人にもしっかりと対応できるようにしなければなりません。
普段から宴会で利用してくれている人が主賓ゲストである場合には、その人の好き嫌いや、ビールならばこの銘柄など、ホテル側から新郎新婦にアドバイスしていくことも大切です。主賓ゲストの要望に対する下準備として、ドリンク一つとっても何かあればすぐに出せるという態勢を整えます。そうした部分はホテル側である私がアドバイスしていかなければならないですし、だからこそ新規の段階で申込書は全て目を通し、配席が決まったら細かく確認します。それを見落としてしまうと、評判が全てに繋がりますから。

ホテルの持つ伝統、格式を大切にしながらも、T&Gの最新トレンドを融合しなければならない。披露宴を志向する層、パーティーを好む層の両方を獲得するためにT&Gとの協業はスタートしており、それによって変化も生じている。
バンケットのショールームセッティングも、以前は次の宴会のスタンバイを気にすることが多かったのに対し、T&Gからの提案によって現場の協力を得ながら、空いてる会場はほぼ見せられるようにしている。また顧客の希望するアイテムに関して、T&Gの保有しているものを活用することでその幅は確実に広がっている。

和装で入場するときに番傘を持って入りたいといった希望に対し、ホテルではさすがに持ち合わせていないため、これまでは『申し訳ありません』と言うしかありませんでした。
T&Gに聞くと、そうしたものも用意出来るということで、その点ではより新郎新婦の希望を実現できるようになっています。

現在広島はエリア全体として厳しい状況で、コロナ前に比べても結婚式は半分程度にまで低迷している。そうした環境で、いかに集客を高めていくかも課題。その面でも、T&Gへの期待は大きい。今年は集客も増加しているが、一因になっているのはHP、ゼクシィに掲載する素材をT&Gが改めて撮影したことによる。

これまでのようにホテルの良さを見せるような写真もあれば、ゲストハウススタイルのパーティー感覚を望む層に、そうした結婚式ができるということをアピースする写真も出しています。テーブルに置いてあるちょっとしたアイテム、例えばテーブル番号の表示も、ゲストハウスならではのオシャレさを追求していると感じます。また場合によってはリアルな披露宴会場を見せられないケースもありますので、VRを使ってセッティングした会場を見られるような仕組みを取り入れるなど。新郎新婦が結婚式をイメージしやすくなることで、披露宴、パーティーどちらの層にもアプローチしています。