【連載企画】ブライダル産業新聞(第6回:京都・滋賀B.M.C.)

今こそ!!Hotel Wedding

※ブライダル産業新聞7月11日号掲載

2019年1月、京都駅前にオープンし、エリアの注目を一身に集めたTHE THOUSAND KYOTO(京都市下京区)。
その後休館を余儀なくされるなどコロナ禍の影響を受けながらも、実質2会場の対応で現在はオープン初年度よりも多い年間180組を施行している。
同ホテルの婚礼部門を取り仕切るのが、ウエディングセールス統括支配人の谷昭宏氏。
ホテルのウィークポイントを解消しつつ、その強みである宿泊を活かしたステイ&ウエディングの仕組みは、今後のホテルWの可能性を示唆している。

THE THOUSAND KYOTO(京都・滋賀B.M.C.) 
ウエディングセールス統括支配人
谷 昭宏さん

婚礼動線を最優先しホテルの課題を解消

谷氏は2007年、同ホテルの親会社である京阪ホテルズ&リゾーツに入社。バンケットサービスなど料飲部門で経験を積んだのち、グループの琵琶湖ホテルにおいてウエディングマネージャーを務めることになった。

4 年程勤務していて新規も出ていましたが、最初の頃は全く受注できず(笑)、30件出て1 件も取れなかった時期もありました。
それまで料飲部門にいたこともあって、例えばこの会場でこういうことはできますか?という話になった時、当日のサービスを考慮した現場目線から人数的にも厳しいから無理ですと応じていました。それを3 、4 回続けると、新郎新婦からすれば話を聞いてもらえないと思われ、受注できないのも当然です(苦笑)。
出来ないと分かっていても、とにかく一旦受け取るという術をそこで覚えました。この形だったら出来なくても、代替提案をしなければならないのがウエディングだと。

その後、ホテル京阪ユニバーサル タワーのレストランウエディングなどを担当し、THE THOUSAND KYOTOの前身である京都センチュリーホテルに異動。新ブランドホテルの、オープニングを手掛けることになった。
同ホテルのウエディング部門は、開業時から注目を集めた。『ホテルでありながら、プライベートを創出する』をポイントに置き、それまでの新郎新婦からの不満点を払拭するウエディングを目指していった。

まずは、動線です。ホテルの場合、基本的な考え方として宿泊がメインであるため、どうしても婚礼動線は後付けになります。
それに対し、まずウエディングの動線を最初に取ったのが大きな変化でした。チャペルを中心にした動きを考えながら、ブライズルーム、宴会場、親族控え室、来賓控え室などを配置していきました。現在はHPにも配置図を載せるなど、動線そのものをアピール材料にしています。

この対応によって、ホテルでありがちな、複数の新郎新婦のバッティングも解消。さらに宿泊・レストランとは異なる、宴会場
専用の出入口も設けた。他目的に利用する他の顧客と混在せず、プライベート感を大切にした結果だ。

それまでは衣裳室と美容室、さらにその間に介添え人の存在がありました。例えば何かミスが起こった時、衣裳、美容、介添え人の誰が見落としていたのかという、問題のたらい回しが発生していました。責任の所在を明らかにするため、衣裳と美容を集約して1 社に任せ、介添えは美容師が対応する形をとりました。
風通しを良くして、何か問題が起こった際にも責任を明確にすることで、改善に繋げるようにしています。

ハード面では、バンケット内にライブキッチンを採用し、外光を取り入れる大きな窓も設置。京都駅から徒歩2 分という絶好の立地ながら、ホテルの周囲を緑で囲み自然を感じられる贅沢な空間にしているのも大きな特徴だ。

マーケットを考慮すると、他のホテルだけを競合とみなして過ごしていても、なかなか新規を取り込めない状況です。いかにゲストハウスの競合の中に、自分たちも入っていけるかはポイントでした。それをイメージしながら、自然を感じられるというキーワードを大切にしています。

空間だけでなく贅沢な時間も提供する

贅沢な空間だけでなく、贅沢な時間を提供しているのも同ホテルのポイントになっている。
ホテルならではの宿泊を活かし、全ての新郎新婦に提供しているのが、【二泊三日のステイ&ウエディング】だ。3 階にあるチャペルから最も近い客室フロアに、7 室のウエディング専用ルームを設けている。京都エリアはただでさえインバウンド需要の沸騰に伴い宿泊予約が困難な状況であり、土日の施行数を考慮すれば、二泊三日のステイを提供するためにも、7 室の専用ルームの確保は必要であった。
ステイ&ウエディングでは、新郎新婦に前日から宿泊してもらう。前日の夕食は2 人だけ、家族と一緒になど、思い思いに時間を過ごす。当日は朝食を提供した後、このルームから結婚式の動線がスタートしていく。

美容師が、客室で支度を始めます。宿泊したルームがいわば挙式用のブライズルームになっていて、チャペルへの移動距離も短いですし、さらにゲストに見られない形で挙式に臨めます。お色直しについては、バンケット近くの美容室で対応する流れ。
当日の夜はバーでの二次会なども案内し、翌日もゆっくりとチェックアウトしてもらいます。

こうした贅沢な体験価値を伝えるために、ホームページではパーティーレポートを目立つ形で掲載している。
今後Z世代の新郎新婦が増えてくる中、結婚式自体の価値が認知されにくくなる可能性も出てくる。二泊三日の上質なウエディングについても、広告上で謳ってはいるものの、実際にどういったものなのかリアルな価値はなかなか伝わりにくい。それを補完する意味でも、パーティーレポートは今後も強化していく。

今年の1 月に開業5 周年を迎えたことを記念し、8 年連続1 つ星に輝くフレンチレストランのCRAFTALE(クラフタル)のシェフ大土橋真也氏監修による特別ウエディングメニュー【CRAFTALE CUISINE】を発表した。

レストランではこれまでも監修メニューを提供することはありましたが、ウエディングでは初めての試みです。それ以前にホテルとして繋がりがあったからこそ実現出来たこともであり、今回の企画が評判を得られればこうした展開の仕方も今後は可能性が出てくると考えています。